「計測にあたっての基本原則」を忘れないために書いておく

大学2回生の頃,計測工学という講義を受講するに際して「新版  電気電子工学(朝倉書店)」という書籍を購入した.この書籍の中で,「計測にあたっての基本原則」という内容が記載されており,私は学生ながらにここは重要だと思い,蛍光ペンでマーキングして忘れないこと!というメモを書籍に直接残している(忘れないこと!っとメモしている感じが私らしい・・・でも出来ているかは別として確かに忘れてない!).非常に基本的なことではあるが,案外その基本姿勢が出来ていなかったりすることもあるので,自分への戒めも兼ねてここに忘れないように書いておく.

 

言葉の定義:測定と計測

日本工業規格JIS Z 8103によると,測定と計測はそれぞれ以下のように定義されている.

  • 測定:ある量を,基準として用いる量と比較して,数値または符号を用いて表すこと.
  • 計測:何らかの目的を持って,事物を量的にとらえるための方法・手段を考究し,実施し,その結果を用いること.

計測においては,まず目的を明確にする,その目的を達成するためには何を測定対象とすべきか,どのような方法で測定するか,これらを十分に検討した上で測定を実施し,その結果を用いることが必要ということである.

計測にあたっての基本原則

計測を行う場合には,以下の5つの基本原則を常に念頭に置いておく必要がある(参考文献[1]より一部引用).

1. 測定目的を明らかにする

計測の定義でも述べたように,計測は何かしら目的を持っている.したがって,測定の前に目的を明確にしておくことが必須であり,その工学的な意味を十分に理解しておく必要がある.「測定の目的は何か?」と尋ねられて「〇〇さんにこれを測定してと言われました」とよく返答されるのだが,それでは測定することが目的化してしまっている.測定の目的を明確にしなければ,測定対象が何か,測定方法や環境を含めた条件をどうするか,信号処理はどうするか,ということを適切に選択することは大抵できない.

2. 測定対象をよく知る

測定対象である物理現象をそのものをよく知ることが重要である.測定対象の信号が直流なのか交流なのか,周期信号なのか単発信号なのか,規則信号なのか不規則信号なのか,信号強度はどうか,周波数帯域をどの程度かなど,これらを十分に理解しておく必要がある.なぜならば,信号の性質によって測定方法や信号処理の方法は全く異なるからである.もし,信号の性質が不明の場合には,信号の性質が明確になるようなプレ測定を実施し,その結果をもとにさらに測定を行う必要がある.

3. 信号源の質をできるだけ良くする

計測の質を上げるためには,信号源の質を上げることが最善である.とりあえず測定してみて,後で信号処理で・・・というのはよろしくない.信号源の質とは,雑音が小さいこと,信号源インピーダンスが低いこと,信号エネルギーが大きいこと,などである.

4. 測定の測定対象への影響を十分に考慮する

測定対象に一切の影響を与えずに測定を行うことは事実上極めて困難である.例えば,電圧を測定する場合は,電圧計に電流が流れ込むという影響が必ず発生する.したがって,一切の影響を与えないことは難しいため,測定対象への影響は前提として,その影響を実用上問題とならないレベルにまで低下させるような測定系を構築する必要がある.

5. 測定目的に合った信号処理と信号源へのフィードバック

信号処理時間,精度,抽出する情報と除外する情報,などが測定目的に合致するような信号処理を選択する必要がある.また,得られた信号を信号源にFeedbackすることによって,測定精度や測定効率が改善するという場合もあるので,これも十分に検討すること.

参考文献

[1] 新妻 弘明,中鉢 憲賢,“新版 電気・電子計測”,朝倉書店,pp. 3-5,東京,2007.

電気・電子計測新版 (電気・電子・情報工学基礎講座) [ 新妻弘明 ]

価格:3,672円
(2019/1/16 21:46時点)
感想(0件)

 

にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ
にほんブログ村